アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎は、かゆみのある湿疹が悪化・改善を繰り返す疾患です。
多くは、アレルギーを起こしやすい、皮膚が乾燥して皮膚の防御機能(バリア機能)が低下しやすい、といった体質(アトピー体質)を持っています。

アトピー性皮膚炎の治療

症状がない、あるいは軽度で日常生活に支障がない状態を、できればスキンケアのみで長期間維持することが目標になります。症状によって、「薬物療法」「内服薬」「注射薬(生物学的製剤)」「紫外線療法」などを組み合わせて治療を行います。

薬物療法

現時点で、アトピー性皮膚炎の症状を十分に抑えられると考えられている薬剤は、ステロイド外用薬とタクロリムス軟膏です。そのほか、皮膚の状態を保つための保湿外用薬や、かゆみをおさえる抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬などが一般的に使われます。

■軟膏やクリームの量
適量は、 1FTU(フィンガーチップユニット)です。
「FTU」とは、人差し指の先端から第一関節までチューブから絞り出した量(約0.5g)を言う単位です。
1FTU(約0.5g)は、大人の手のひら2枚分の面積を塗るのに適した分量の目安です。
塗り薬はたっぷり塗ることで十分な効果が得られやすくなります。逆に、塗る量が少なすぎると十分な効果が得られなくなります。
■塗り方のポイント
軟膏は皮膚にすりこむのではなく、皮膚にのせるようにやさしく塗ります。指先や手のひらを使って、やさしく丁寧に広げます。
外用薬は、皮膚の表面にある溝に沿って塗るとムラなく広げることができます。
■外用薬による治療のながれ
一般的にアトピー性皮膚炎の治療は
(1) 皮膚炎の症状・かゆみをおさえる
(2) よい状態を維持する
というステップで行われます。
■具体的な療法
「リアクティブ療法」症状が出たときにステロイド外用薬などで炎症をおさえる
「プロアクティブ療法」症状がおさまってもしばらくステロイド外用薬などを続けコントロールしていく再発の多いアトピー性皮膚炎の場合コントロールがしにくいため、現在では徐々にプロアクティブ治療が推奨されるようになっています。

内服薬

アトピー性皮膚炎はかゆみが起こりやすいため、かゆみをおさえる目的で抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬が処方されることがあります。

  • 抗ヒスタミン薬は、副作用として眠気が強く出るものもあるので、日常的に乗り物の運転する方はご相談ください。

注射薬(生物学的製剤)

アトピー性皮膚炎の治療法の多くは症状やかゆみをおさえる対処療法でしたが、最近ではアトピー性皮膚炎の原因にかかわる分子をターゲットにした治療薬である生物学的製剤デュピルマブ(遺伝子組換え)も登場してきました。

非常に効果が高く、中等症以上のアトピー性皮膚炎の従来治療で効果が不十分な方に使用され、副作用が少なく長期的な寛解が期待できます。

■デュピクセント®
デュピクセント®は、2018年に承認された注射薬です。
アトピー性皮膚炎の原因のひとつとして考えられている「IL-4」と「IL-13」という物質の働きを直接抑えることで皮膚の炎症反応を抑制する、新しいタイプのお薬です。アトピー性皮膚炎の皮膚の内部に起きている炎症反応を抑えることによって、かゆみなどの症状や、皮疹などの皮膚症状を改善します。
【投与できる方】
今までの治療法で十分な効果が得られない成人(15歳以上)アトピー性皮膚炎の方にお使いいただけます。
【投与できない方】
デュピクセント®に含まれる成分に対して、アレルギー反応を起こしたことのある方
【投与において注意が必要な方】
  • 寄生虫感染のある方
  • 生ワクチンを接種する予定のある方
  • 妊婦または妊娠している可能性がある方、授乳中の方
  • 高齢の方
  • 喘息等のアレルギー性疾患をお持ちの方
デュピクセント®の治療が受けられる方には条件や注意がございます。
まずは医師にご相談ください。
■ミチーガ
ミチーガ皮下注用60mg(有効成分:ネモリズマブ)は、アトピー性皮膚炎の「かゆみ」を誘発するサイトカインであるIL-31をターゲットとしたヒト化抗ヒトIL-31受容体Aモノクローナル抗体である生物学的製剤です。
小児(6歳以上13歳未満)のアトピー性皮膚炎と、成人及び13歳以上の結節性痒疹で使用可能なミチーガ30mgがあります。
抗アレルギー剤の内服でもコントロール不良のかゆみの強いアトピー性皮膚炎で高い効果を発揮します。

紫外線療法

過剰な免疫反応を抑えることを目的とした、紫外線治療の中でも、副作用のおきにくい波長が311nm付近の極めて狭い範囲の紫外線ナローバンドUVBを使用します。